東京喜多マラソン3「待ってます!マラソンゲートで」★20120603

 

今大会、制限時間は6時間。

そして私の今回の最低限の目標は完走。

しかし私にはもっと高い目標がある。

それは「5時間以内でのゴール」である。

これまでの練習で、おそらく6時間は切れる自信はある。

ただ、できるとわかっていることをやったところで、

あまりうれしさ、おもしろさはない。

難しいと思われることに挑戦し、それを達成するところに

意味があるのだ。

 

目標を達成するため、私は初めてのランニングウォッチを着けていた。

CASIOの時計だ。本当はGPS付きの物が良かったが、

高価なため購入は見送った。

距離、ペースは携帯のアプリで管理し、タイムは見やすい時計で確認する作戦だ。

 

 

 

スタートして2時間15分経過。

あっという間に中間点、21キロ地点を通過。

ここまではなんとか順調。

しかしだんだん暑さが気になってくる。

梅雨入り前の東京。

その暑さは真夏並みだ。

 

給水所に着くたびにその場は大混雑。

前年のレポにあった、

「お願いです!水だけは、水だけは飲ませてください!!」

の叫び声が頭の中で再生され、水が飲めないのではないかという恐怖が襲ってくる。

 

しかし大丈夫、私には秘密兵器がある。

それはウエストポーチに忍ばせた500mlのスポーツドリンクとゼリー飲料だ。

正直、重さはかなり気になってはいたが、

給水、エネルギー補給のためにはどうしても必要だ。

これを少しずつ摂りながら前へ、前へと進む。

 

 

 

ついに30キロ地点を通過。

今までの練習で走った一番長い距離は30キロ。

ここからは未知の世界となる。

持ってきたスポーツドリンク、ゼリー飲料を飲み干し、

ここでペースを上げる。

勝負だ!残りはたった12キロだ。

 

呼吸が荒くなる。

大丈夫。今まで散々練習してきたじゃないか。

前を走るランナーを一人、また一人と抜かしていく。

 

苦しい。

いや、行ける。このままゴールまで・・・。

 

 

 

 

ダメだ。

もう走れない。

体が重い。

足が重い。

 

コース脇の距離表示を見る。

 

「32km」

 

 

ついに歩き出してしまう。

私の渾身のスパートはわずか2キロで終了してしまった。

 

残りはまだ10キロもある。

しまった。スパートなんてするんじゃなかった。

少し前の自分の決断を後悔しながら歩く。

 

容赦なく照りつける日差し。

河川敷に日陰なんてものは存在しない。

暑さに耐えながら黙々と前に進む。

ただし、歩きで・・・だ。

 

 

ふとコース脇の土手を見上げる。

楽しそうに話しながら駅の方向に向かって歩いて行く人の姿が見える。

 

すでにゴールした人たちだ。

そうか、ゴールした人から順に解散で、帰れるんだ。

思いもよらなかった。

これまで学校のマラソン大会では、最後の人がゴールするまでみんなで待って、

全員揃ってから解散だった。

 

大人のマラソン大会は、違うんだ。

まだ必死にゴールを目指している人がいる一方、

楽しそうに帰っていく人たちがいる。

自分が落ちこぼれになったような感じがして、

惨めな気持ちになる。

 

「東京喜多マラソンは人生の罰ゲーム。」

前回のレポにあった一文が何度も頭の中に浮かんでくる。

 

何で自分はこんなことをしているんだろう・・・。

 

そんな気持ちが浮かんでは消え、浮かんでは消えていく。

 

 

何でこんなことをしているのか。

 

 

走り始めた時のこと。

走ろうと思った時のこと。

 

今までのことを思い返す。

 

 

 

そうだ、マラソンをしたかったんだ。

何者でもない自分から、マラソンランナーになりたかったんだ。

ゴールして、マラソンを完走した証のメダルをもらうんだ。

自分を変えるんだ。

 

 

自分を奮い立たせ、前へ進む。

走る体力はもう残っておらず、歩くのが精一杯。

 

『大丈夫だ。俺は初めての練習で42キロ歩いた男だ!』

『歩くのならまかせろ。絶対にゴールまで辿り着いてみせる!』

 

自分を励まし、前へ進む。

 

残りはあと5キロ。

コースは直線のため、ゴールのマラソンゲートは遠くからでも見えるはず。

よし、このまま何とか歩いて進んで、マラソンゲートが見えたら最後は走ろう。

 

そう心に決め、前に進み続ける。

 

 

やがて遠くに、黄色と青の門が見える。

『見えた!マラソンゲートだ!あそこがゴールだ!』

 

ゴールまで、あと少し。

 

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